SPARKILLING

作家志望の発達障害/統合失調症者が展開する文章世界!

第五談 両親「失う物と得る物」ーだから私は

ーあなたの現在を、聞きたいと思います。
 記憶は未だに虫食い状態です。生き地獄も、変わらず継続中。
ーそれに終始しますか。
 地獄の中で、大学は西南の神学部を四年間で卒業しました。しかも、出る時も学部トップで。
ー周りの度肝を抜き続けますね。
 いえ、周囲の反応は「不思議だね」でした。皆、私の経歴とか、状況を知っていたので。私は手首を切ったり、薬を飲み過ぎたり、隠れて首を吊ったりもしていましたから。

 
ーでは、学部トップ、と言うのは、成績面のみでの評価ですか。
 そうでしょうね。在学中の成績が群を抜いていたから、と教授に言われました。三年次の前期で受けた試験科目は、全て最高評価だった。
ーその反面で、精神状態は上向かなかった。
 自分は大学卒業から、同じ場所を彷徨っている気がしてなりません。ここ直近は変わりましたが。でも、浮き沈みはあります。
ー実際に、就職が出来ていませんよね。
 情けありませんが、そうです。この為に、自分を責め続けて死にたくなります。
ー御家族はその後、どう推移したのでしょう。
 先ずは両親ですが、電気拷問の件を一言足りとて謝らないのですよ。それどころか、「話をするな」と言われる始末。閉口させられます。
ー弟さんはどうですか。
 連絡先と消息が立ち消えています。今年か来年には、家業を継ぎに帰郷するらしいですが。第二動物病院を彼の為に建設中、だそう。こうなると敵が更に増えて、私は戻る場所が無くなります。戻らなくて良いですけれども。
ーその前に、彼は伝習館を卒業したのでしょうか。
 はい。それから日本大学に進んだそうです。高校時代、実は彼も精神科の世話になっていたと聞きました。不眠だったそうです。
ーまたしても、姉弟が揃って。
 うちには忌まわしき呪いとか、変な遺伝が存在するのではありませんか。でも、彼は私に比べたら軽症ですよ。何故なら、精神病の人を蔑視するのは、健常者のする事ですから。
ー苦しみを分かっている人は、苦しんでいる人を軽蔑しないですよね。
 それを考えると、うちの家族は心底に苦しんだ事が無いのでは、と言えます。
ーあなたが家族を軽蔑するのは、こう言った理由もありますか。
 はい。あなた達は私からすると、一笑に伏せる程度の存在だ、と言いたい。
ー頑なな見方ですね。
 自分で重々、それは分かっています。けれども、過去や現実は変えられませんから、強がるか笑い飛ばすのが得策です。嘆いたり、泣いたりするのは惨めですし、助けてくれる人も居ない。
ーその考えは、辛くありませんか。
 元々が辛いので、それに上乗せされても何も感じませんね、特には。でも、今の主治医は私にこう仰った。「あなたは重過ぎる荷物を一人で持っている状態だ」と。
ー荷物。
 推測ですが、その中では電気拷問の占める比重が大きい、と思います。経緯、体験、記憶、トラウマ。
ーあなたはその発言に対し、何と返しましたか。
 「荷物を一緒に持ってくれる人は、出て来ますか」
ーそれは精神科医でも、分からないでしょう。
 彼は分からない。私はそう分かっていたから、敢えて訊ねました。すると、主治医はこう返したのですよ。「出て来なければ、困るじゃないか」
ー希望的ですね。
 はい。まだ私にも生きる望みはあるのかな、とその時に思いました。
ー望みを、電気治療で奪われた筈だったのに。
 そうですね。両親は未だに奪う側に居ますが。何をするにしても反対されます。だから、全ては事後報告。私は自分で人生を生きたいので。
ー御両親は現在、あなたのトラウマについて、何と言いますか。
 トラウマを自分達が作った事を、なかなか認めません。病気、と言う表層のみを彼等は捉えます。私の状態が良くなったら、喜びはしますが。
ー家族で揃って、頑なな姿に見えます。
 互いに自己を張り過ぎて、衝突した。ここがうちの問題の本質でしょうね。私が家から離れた事で、均衡が取られたので。
ーあなたは本当に、実家へと戻る気はありませんか。
 一切ありません。せめて両親には電気拷問について、「辛い思いをさせた」「申し訳が無かった」と認めて欲しいのですよ。でも、そう言った人間として最低限の行動すら行わない彼等を、私は今や、諦観しています。恥ずかしい生き物です。
ーその為に、あなたは長い間、不満を抱えているのですね。
 幾ら、物や金銭で対応をされても、満たされないものはありますよね。彼等はそこを分かっていない。経済や知識が豊かでも、真相を見ていない大人は親になる資格を持ちません。
ーそう言うあなたは、親になろうと思いますか。
 いいえ。私は、自分も他人も不幸にします。自分をそこから拾い上げる作業が、私の人生の課題でしょうね。私の見ている真相は、これだけです。