SPARKILLING

作家志望の発達障害/統合失調症者が展開する文章世界!

第三談 私「何故自分は言葉が話せるの」ー(1)二重の金庫と禁錮

ー目が覚めてから直ぐ、両親が来た訳では無いのですね。
 はい。自分の事を他人事が如く言いますが、日数を計算すると、服薬してから一週間は意識が無かった様です。それから更に暫くしてから来ましたよ、やっと。
ーあなたは父親に怒鳴られて、何を思いましたか。
 何も思いませんでした。私は記憶が消えていたので。
ーどう言う事ですか。
 電気拷問の副作用で、それまでの記憶がほぼ、飛びました。だから最初に両親を病室で見ても、誰なのか分からなかったのですよ。

 ー御両親はあなたの反応に、衝撃を受けたのではありませんか。
 私の知った事ではありません。自分達が記憶障害の危険性を承知で希望して、受けさせた結果ですから。衝撃を受けるべきは当方ですよ。
ーしかし、娘が自分達の事を覚えていないと言うのは、親からすると。
 驚きと悲しみの余りに父親は怒鳴ったのでしょうね。身から出た錆、自業自得としか言い様が無いのに。やはり勝手度合いがここでも表出しています。頭の中が突如、真っ白になった私はどうすれば良いのか分からない。
ーあなたと御両親、双方の言い分がありそうですが。
 断言しますが、私は大方に於いて被害者です。親に迷惑と金銭を掛けさせた面では、加害者ですけれども。それ以外は親と松岡病院が強引を過ぎます。
ー本当に記憶が失われたのですか。
 思い出す作業すら、物凄い頭痛が来て出来なかったのです。言葉を口にするだけで精一杯、と言うよりも、自分が話している状況自体が異様に思えました。具体的な記憶は、何も残っていない上だったので。
ー言語、と言う概念や本能、みたいなものだけが残ったのでしょうか。
 そうだと思います。数字の計算は出来なくなっていました。病院の売店で買い物をするにしても、誰かの援助が無いと無理。これは目が覚めてから、数週間後の事ですが。
ー本当に、悪夢、生き地獄ですね。
 そうとしか言えない。悪夢だったらいつか醒めるので、良いですけれども。私は人生をこう言った形で潰されてしまった。自分の悪夢が醒める時は、死ぬ時でしょう。それまでは苦しむか恨むか憎むしか無い。生き地獄です。
ーところで、拘束されていた、と言う事について、どう思いますか。
 自殺を止めさせる為に電気拷問を行ったのならば、拘束した所で意味があったのかどうかを問いたいです。頭と身体の両方を抑圧する目的ですかね。
ー二重に金庫へ入れられて、鍵を掛けられた表現が合いそうです。
 はい。又は刑務所の中での禁錮、ですね。おや、「きんこ」が重なりました。アハハハハハ。
ー笑うべき場面でしょうか。
 もう笑うしかありませんよ。泣いてもどうにもならないので。そうして何かが変わったり、誰かが優しくなったりする訳では無い。
ーあなたの人間不信の根本は、きっとここにあるのでしょうね。
 私もそう思います。自分が幾ら努力して頑張っても、周りは応えないと言う現実に直面してしまった。それどころか、上手く行かないと、死刑執行と同等の拷問まで食らわされる。しかも、本人不在の裁判で決められて。これで誰かを信じる人間が生まれたら、それはおかしい。
ー御両親は、娘の心の動きを予想されていたのでしょうか。
 これは確実に言えますが、していません。最近の事ですが、母からこう来ました。「自分達は好きで電気治療を行った訳では無い。他に方法が無かった」。それをメールで済ませるか、と思います。
ーそうですね。
 更に、父親に至ってはこう来ました。「松岡病院の後に入院させた病院でも電気治療を勧められた。けれども自分が断った」。やはり、メールにて。
ー行動を正当化している様な、過ちを上塗りしている様な。
 もうこいつら死んで良いんじゃね、と思います、心底から。今も昔も。精神科に強制入院させられた少年が、バスジャックの上で殺人を犯してしまった。ならば、精神科に医療保護入院させられて電気を食らい、記憶が飛んで、挙句の果てに周りからあしらわれる少女は、全人類を抹殺したとしても、何ら疑問を持たれないでしょう。最低限度として、親は殺して良いかと思います。
ーそれは犯罪です。
 一般的にはそうですね。だから私は、自分を力尽くに抑えました。矮小な存在の為に現実世界でも人生を棒に振りたくない、その一心で。けれども、脳内では数える事が出来ない位に、親を殺し続けています。
ー一種のカタストロフィですね。
 Catastrophe、とは二つの意味がありますよね。「大惨事」と「破滅」、原因と結果が一緒になった単語です。うちの場合、直接に前者を引き起こしたのは先方で、後者を受けたのは当方でしょう。
ーそう、簡単に断定が出来ますかね。
 細部を見ると、違います。私が自殺未遂を行わなければ、拷問を受けなかった。薬は、精神科に掛からなければ、手にする事は無かった。精神科は、病気にならなければ、行かなくて良かった。結局の所、親には「娘の為に」と言う心理があったのだと思います。
ーでも、あなたはさっき、その親を殺したいと言っていました。
 はい。娘の為に、のベクトルが余りにも見当違いの上、行き過ぎている。しかもそれを遥か後になってメールにて説明する。この対応に私は激しく疑問を覚えます。